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発売年:1989年
開発元:ウルフチーム
ジャンル:コマンド選択式AVG
発売機種:PC-88、PC-98、X68000、MSX2
※画像はすべてX68000版のものです

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*概要とあらすじ

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「ガウディ バルセロナの風」は、日本テレネットから独立して「YAKSA」や「アークス」などを手がけた「ウルフ・チーム」が、1989年に発売した「コマンド選択式アドベンチャーゲーム」で、私の記憶が間違っていなければそれまで主にアクションゲームやRPGを製作してきていたウルフチームの初のアドベンチャーゲームだったと思います。

ゲームの舞台は現代、バルセロナオリンピックを間近に控えた頃のバルセロナなのですが、現代もののAVGでは珍しく主人公が刑事でもなければ探偵でもない「情報コンサルタント」という設定が異色であり、システム面では後述する「HRS」や「OPS」というこれも当時のAVGとしては珍しいシステムを採用した、ウルフチームらしい挑戦的な作品でした。

主人公「ヘンリー・ハワード」はスコットランドヤード時代に、自分の妻と子供を殺した犯人を追い詰めたものの、犯人に放ったはずの銃弾は、たまたまその場に居合わせた無関係な青年にあたり彼の命を奪ってしまう。事故の責任とそのショックから立ち直れなかったヘンリーは刑事を辞め、ロンドンで裏情報を扱う「情報コンサルタント」として活動していた。

そんな彼の元に、ある日とんでもない依頼が舞い込んくる。それは、
「どうか、スペインを救って欲しい」
というものだった。ゲームのストーリーは、こんな感じです。

*システムについて① OPSとは?

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では早速ゲームシステムについて紹介して行きましょう。
まず本作は「コマンド選択式のアドベンチャーゲーム(以下:AVG)」ですが、普通のAVGとは違い画面上にコマンドの一覧がありませんでした。ではどうやってコマンド選択するのかというと、カーソルを画面に描かれている物や人にあわせてエンターキーを押す(マウス対応機種は左クリックする)と、ウィンドウが開きコマンドの一覧が表示されます。

コマンドは、例えば人物にあわせてキーを押せば「話す」、電話にあわせてなら「電話をかける」、建物にあわせてなら「中に入る」などのカーソルが指しているものに合わせたコマンドが表示されるので、そこから実行したいコマンドを選択して実行するのです。これを本作では「OPS(オブジェクト・ポインティング・システム)」と呼んでいました。

このOPSは、主人公がどこかへ移動する場合にも適用されており、”大きく”移動する場合は画面に地域のマップが表示され、そこから行きたい場所にカーソルを合わせて選択するという方式になっていたのですが、この移動(特に”小さい”移動)におけるOPSの不親切さが本作の印象を非常に悪くしてしまったのです(それいついては後述)。

*システムについて② HRSとは?

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次にHRSについてなのですが、実は本作は「マルチストーリー」の「マルチエンディング」方式になっていました。とはいえ、それほど大きく話が変わる訳ではありませんが、何箇所かにあるルート選択によって話が若干変わるだけでなく、その後の展開やエンディングにも選択の影響がありました。ただこれをマルチエンディングと言って良いかは疑問ですが。
(正確には結末に至るアプローチが変わる、かな?)

通常こういったマルチストーリーになるAVGでは複数のセーブデータが作成可能で、重要な選択肢の前にセーブをしておいて、後でそのデータをロードして別のルートをプレイすることができるものですが、本作ではセーブデータがなんと1個しか作成できませんでした。じゃあ、別ルートで遊びたいときは、また最初からやり直しするの?と思いますよね。

そこで登場するのが「HRS(ヒストリー・リピート・システム)」です。このシステムはいつでもオプションメニューから実行が可能で、その機能はプレイヤーが今まで実行した行動を「1ステップ戻る(進む)」ことができるというものです。つまり何か大きな選択をして話を進めてみて、なんか間違えたかなあと感じたとしたら1ステップずつ戻してまた大きなからやり直すことができるんです。

ということは、これプレイヤーがゲームを開始してからの実行コマンドを全部記録してるって事なんですよね。それはそれで凄いことなんだけれど…、そこまでやるならセーブデータの数増やしたほうが簡単だったんじゃないだろうか?

*OPSの弊害

さて先ほど説明したコマンドを実行したいものをカーソルで指定することで、それに応じたコマンドが表示されるOPSなるシステムですが、一見便利なシステムに見えてこれが本作の大きな落とし穴になっていました。その穴は、主に”移動”、つまり場面転換においてプレイヤーを待ち構えていたのです。

物を調べるならその物にカーソルを合わせればいいのですが、じゃあ移動はどうすればいいのでしょう?建物に入るなら建物の入り口付近を選択すればいいのですが、今いる画面からほかの所に移動するにはどうすれば?
その答えは、画面のどこかを選択するのです(なんだそりゃw

この「どこか」というのが非常にネックで、大抵は”何も無い場所”(主に空とか)を選択すれば地域マップに戻る「地図に戻る」というコマンドか、今いる場所から繋がっている他の場所へ行くコマンドが見つかります。しかし問題なのは、空以外の何の脈絡も無い場所に移動コマンドが隠されている場合、そして選択した際に反応する範囲が異様に狭い場合です。

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例えば、ロンドンの地域マップから主人公のアパートがある「ソーホー地区」に移動した場合、ここから移動できるのは地域マップ、主人公のアパート、主人公行きつけのバーの前の3箇所になります。しかし画面上に何も無い場所、つまり空はあるのですが非常に狭く、ここには地域マップに戻るコマンドしか仕込まれていません。あと2つはどこに?

正解は画面右下の道路あたりにアパート、右端の赤い建物のあたりにバーの前への移動コマンドが仕込まれています。しかしこれはまだ解りやすいほうで、中には本当になんの関係もない美術館の壁を選択すると「病院」への移動コマンドがあり、さらにそこからほんの少しずれた位置に「ホテル」への移動コマンドが仕込まれているなんてのもありました。

あとストーリー進行に必要な人物の家に行く際に、画面のほぼ真ん中の空、そこのほんの数ドットにだけ移動コマンドが仕込まれているというのもありました。わかるかそんなもん!!ぶっちゃけると本作には「謎解き」の要素が無いのですが、この「行かなくてはいけない場所へいけるところを探す」というのが本作最大の謎解き部分であるといえるでしょう。

そこに全く面白味はありませんでしたが!

*本作の良いところ?

まあ批判めいたところも書いてきたので、ここらで少し本作の良いところを紹介しましょう。
本作はAVGでありながら、他のAVGでありがちな”ある要素”をほとんど持っていませんでした。それは当時のAVGでは普遍的に行われる、画面のいろんなものを調べて話しかけてアイテムや情報を取得し、情報やアイテムをわらしべ長者のように交換しながらゲームを進行するというものです。本作ではこれが殆ど必要ありません。

本作では、他のAVGのようにいくつもフラグを積み重ねないと先に進めないということが無く、必要な相手(主要人物)に、必要なタイミング(それは会話で解る)で話しかければほぼ全てのストーリーが進行します。画面のあっちこっちを調べることも、見かけた人々に話しかけることも出来ますがそれによってフラグが立つ、ストーリーが動く、何かを手に入れるということはありません(ごく一部のみ例外あり)。

AVGとしてそれはどうなの?と思う部分もありますが、実際プレイしてみるとそこについては非常にストレスが無く遊べ、物探しに必死にならずにストーリー進行に集中できるという大きなメリットがありました。これは本作の前年に発売された「アークス」が経験値・お金稼ぎの要素を排除してストーリー性を重視したのと同じ方向性なのでしょうね。

ただ前述したOPSによる移動のストレスが、結果的にこの良い部分も台無しにしてしまいましたが…。

*実にウルフ・チーム

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さてウルフチームといえば、私は世界観とストーリー、BGMとグラフィックについて当時のゲームメーカーの中でも高水準のものを作っていた会社だと思っています。本作でも、グラフィックは今までのウルフチームと色合いのかなり違うものですが、現代物であり内容がハードボイルド風なことを考えれば、それはむしろ合致しているといえます。

また風景も前半の舞台となるロンドン、そして後半の舞台バルセロナ、共に写真とはいいませんがリアル目に描かれており、ストーリー進行に関係なくあちこちを見て回ってちょっとした観光気分を味わうことも出来ます。さらにBGMもロンドンでは少し暗めでムーディな曲、スペインでは一転して情熱的な明るい曲が雰囲気を非常に盛り上げてくれていました。

世界観・ストーリーについても、刑事でも探偵でもない「情報コンサルタント」などという職業の主人公が、物語の中でどう動くのか?と思っていたら、主人公は依頼の内容に応じて「情報操作」や「扇動」を行うだけでなく、場合によっては「破壊活動」まで躊躇無く行うという「○ロリスト」、いやフリーの「工作員」と言ったほうが近い、そんな危ない人物だったんです。

かつては暗殺者を題材にした作品も作っていたウルフチームらしい、いかにも!という感じの作品でした。

*方向性の転換は正解?

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さて何度もいいますがウルフチームといえば、世界観とストーリー、BGMとグラフィックについては高水準であったものの、肝心のゲーム性やゲームシステムがそれに追いつけていない、そもそもアクションゲームの苦手な当時のパソコンで意固地になってアクションゲームを作り続けていた、そんな印象があります。

そのウルフチームとAVGというのは、実は相性が良いのではないかと思っていました。だってAVGならウルフチームお得意の世界観とストーリー、BGMとグラフィックが存分に活かせるじゃないですか?システム面でも、当時AVGのフォーマットはほぼ完成していたので、それに準じたものを作れば凄く良い作品になると思いませんか?

しかしまあ結果として、そのシステムに無理な独自性を加えたおかげで本作は若干残念な結果にはなってしまいましたが、そのチャレンジ精神もウルフチームらしいと言えますし、ここまで来るとそういうところが好ましいとも思えてしまいますw

そして本作で何かを感じたのかウルフチームは本作以降、つまり1990年代に入ると今までのようなアクションゲームをパソコンで作ることはほぼ無くなり、シミュレーションゲームとAVGに路線を切り替えていきます。まあそっちの方面でも相変わらず「らしさ」を見せ付けることはありましたが、個人的にはシミュレーションゲームでは「緋王伝」、AVGでは「東京トワイライト・バスターズ」というかなりの良作を生み出す結果に繋がったので、この方向転換は正解だったのではないかと考えます。

東京トワイライト・バスターズも、そのうち是非紹介したいですね。

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