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発売年:1984年
開発元:クリスタルソフト
ジャンル:フィールド探索型RPG
発売機種:PC-88、PC-98、MZ-2500など
※この記事は2016年に再編集したものです

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blog_kanrinin
「RPGにおける主人公」というのはどんな人間じゃろうかのう?お主、何かひとつRPGの主人公というものを思い出してみてはくれんか?それはどんな人物じゃ?世界を救うことを運命付けられた、あるいは魔王を討伐するために選ばれた勇者かの?それとも一攫千金や勇名はせる為に旅立った冒険者かの?

RPGならやはりプレイヤーが主人公に感情移入しやすいように、そういう”憧れの主人公像”というのが用意されておって、それでプレイヤーの気持ちを盛り上がらせておるもんじゃ。ところがのう、世の中にはなかなか主人公に感情移入できなさそうな設定の作品というものもあるんじゃよ。

今回紹介する作品がそれなのじゃが。この作品の主人公はなんと”神から罰を受けた人間”なんじゃ。勇者でもなければ冒険者でもない、言ってみれば罪人じゃな。どうじゃ?そんな人物が主人公のRPG、ちょっと興味がわいてきたじゃろ?

では入るがよい、勇者の塔  FLOOR 03 じゃ!

「夢幻の心臓」とは?
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「夢幻の心臓」は、1994年に「クリスタルソフト」が発売したフィールド探索型ファンタジーRPGで、後にシリーズ化し1990年の「夢幻の心臓III」までに3作品が発売された。

本作は「ブラックオニキス」、「ドラゴンスレイヤー」、「ハイドライド」などと並び、国産RPG黎明期を代表する作品のひとつと言われており、「ウルティマ」タイプのフィールド画面に、「ウィザードリィ」のような戦闘画面を融合させたシステムは、後に自社作品だけでなく、他社の国産RPGにも影響を与えている。

本作は、主人公がこの世界を旅することになった理由が特殊であること、ゲームクリアまで期限が設けられたRPGであること、また普通にプレイすると最弱クラスの敵にも勝てないことなど、非常に特徴的で記憶に残る作品である。

ストーリー

地上での戦いで死んだ主人公は、死の間際、神々に呪いの言葉を発した。
それにより主人公の体は、
天国でも地獄でもないもうひとつの世界《夢幻界》に落ちてしまう。
そこは光と闇が交錯する剣と魔法の世界。

主人公が再び地上に帰るには、
3万日の間に「夢幻の心臓」を手に入れなければならない。
もし夢幻界で死んでしまったら、主人公の魂は輪廻の輪から切り離され、
永久に続く苦痛の中に封じ込められてしまうのだ。 

 
このように本作の主人公は世界を救う勇者でもなく、世に名を残そうとする冒険家でもない。
神々に暴言を吐いたせいで”罰”を受けた、ただの人間なのである。

農民にすら勝てない主人公
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ゲームを始めると、なんの説明も無くフィールドに放り出される。取り敢えず近くの町に行くが、そこには大仰に迎えてくれる王様もいなければ、情報を親切に教えてくれる町の人もいない。
それどころか、町で情報を貰うにはゴールドを要求される始末。

そんな町を出て外を歩いていると、目つきの悪い貧相な身なりの「農民」に出会う。何か情報をくれるのではと話しかけるが、いきなりカマで切りつけられ戦闘開始。やむなく反撃するが、攻撃が全然当たらない。ごく稀に攻撃に成功したものの、殆ど一方的に斬り殺された。

改めて最初からゲームをやり直してみると、今度は「修道士」に出会う。神に仕える身である修道士なら大丈夫だろう、今度は助けになってくれるだろうと思い話しかけるが、今度は毒を盛られたうえで殴り殺された。
 
何なんだこの無法地帯は。
何なんだこの世界は。 
主人公に味方してくれる人間は誰もいないのか、多くのプレイヤーはきっとそう考えてしまうだろう。しかしそれも当たり前なのだ。なぜなら主人公は世界を救う勇者でも、難関に挑む冒険者でもない。

神を冒涜して罰を受けた者なのだから。
だからこの世界は主人公に味方してくれない。親切な人など殆どいない。それがこのゲームの世界なのだ。

どうすれば勝てるのか考えてみよう
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この世界の人間の事は置くとしても、戦闘での攻撃の当たらなさは酷すぎる。先程遭遇した農民は、「ドラゴンクエスト」で言えば「スライム」か「スライムベス」程度の存在なのだが、戦ってみるとこちらの攻撃は滅多に当たらず、一方向こうは頻繁に当ててくるので、大抵勝てずに負けてしまうのである。

仮に、運よく勝てたとしよう。その場合は間違いなくこちらも瀕死状態なので、町で治療する事になるのだが、治療費がこの農民を倒して得られるゴールドより、はるかに高い。つまり、戦えば戦うほど金銭面は窮地に陥っていく一方なのだ。

では一体どうすればいい?少し考えてみよう。

◆最初の所持金で、強い武器を買えばどうか?
それは確かに有効だが推奨はできない。なぜならこのゲームにおいては、武器も防具も戦闘中に何の予告も無く突然壊れることがあるからだ。もちろん修理など出来ない。そのため折角高い武器を買っても、その代金を稼ぐ前に壊れてしまう可能性のほうがはるかに高いのだ。

◆それでも勝てるなら、頑張ってレベルアップすれば楽に勝てるようなるのでは?
普通のRPGならともかく、本作ではそれも無理だ。なぜなら本作には”レベル”が存在しない。経験値はあるのだが、それによる成長が基本的に無いのだ。つまりどれだけ頑張ってプレイしても、永遠に「まるで成長してない…」状態なのである。

ちなみにもし主人公が死んでしまったら、死んでしまうとは何事だと言う王様の元に飛ばされることもなければ、自動的にセーブポイントに戻されてやり直しにもならない。もし主人公が死んでしまったら、キャラクターデータごと消えてしまうのだ。灰になる事すら許されない、即ロストである。

酷い罰ゲームだ。
こんなゲームクリアできるのか?

しかしそれも仕方が無い。なにしろ主人公は勇者でも冒険者でもない、神から罰を受けた身なのだから。
(ここまで来たら主人公ではなく、最早プレイヤーへの罰ではないか?とも思うのだが) 

key03KEY POINT
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もし本作が本当にこのままの仕様であったなら、プレイヤーにクリアさせる気の無い”駄作”となっていただろうが、一応対応策が用意されており、それが本作をまともにプレイできるようになる”鍵”となっている。

攻撃が当たらないことへの対応策は、ズバリ”修行”である。町にある特定の施設では、修行でキャラクターの能力値を上げることができる(もちろん有料だが)。これは一時的なものではなく恒久的なものであり、レベルによる成長の無い本作にとってほぼ唯一の成長方法である。

ゲーム開始直後に、この修行に全額を投じて攻撃力と回避力を上げれば、中級クラスの武器防具を上回る能力が確保でき、かつこちらは武器防具と違い壊れる事がないため、最初の町で武器防具を買うよりも遥かに有効な方法なのである(武器防具は敵が落とすのでそれを使えば問題ない)。

では経験値は何のためにあるのかというと、実は修行により上昇させられる能力値には上限が決まっており、この上限を超えてさらに上昇させるには、あるアイテムを使用して今度は経験値を代償に支払うのである。ちなみにこれらのことは、マニュアルには記載されていない。
”経験値を能力に変換できる”程度には書いてあるのだが…。

それ以外で、体力の回復についてはフィールド上で野宿することで1晩たった1pだけではあるが回復できるので、ゴールドに余裕が出来るまではこれで凌ぐ。もし死んでしまった場合は、データが消える前(タイトル画面に戻る前)にリセットする。これで対応ができるようになっている。

素晴らしいグラフィック
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本作にはこれまで説明した事の他にもいろいろな”難儀な部分”があるのだが、もちろん非常に良い部分も存在する。そのなかでも特に伝えておきたいのが、登場する人間やモンスターグラフィックの素晴らしさだ。実はこれらのグラフィックは、古いAVGのようにBASICのLINE文とPAINT文で描かれるというやや貧弱な表現力のものなのだが、それを感じさせない迫力が殆どのグラフィックから感じられる。

その理由はモンスター達の絶妙なポーズのチョイスと、巧みな陰影の表現であろう。あまり細かい表現が出来ない、細部まで描き込めないことを逆手にとり、大胆な陰影とそれにあわせたポーズをつけることで、プログラムの貧弱な表現能力を感じさせない素晴らしい迫力を持ったグラフィックになっているのだ。

特に後半に登場するモンスターほどその傾向が高い為、序盤でゲームを諦めてしまった人は非常にもったいないと言えるであろう(筆者も含めて)。

ただし、BASICのLINE文とPAINT文ではどうしてもグラフィックを描き終わるまでに時間がかかってしまい、続けてエンカウントしてしまうような場合はストレスになってしまう。開発側もそれを理解していたのか、ゲーム中にいつでもグラフィックの設定を”通常”か”線画のみ(色無し)”に切り替えることが出来るようになっていた。
(ただ線画だけでは、快適でもやはり素っ気無い…)

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どうじゃったかの?常識的に考えても色々難儀な作品だと思うじゃろ?

しかしこの時代はまだ”RPGとはこういうもの”という概念そのものがまだ完全に確立しておらん時期じゃったからの、その”常識”というものも存在は薄かったんじゃ。逆に言えば多くのRPGが「ウルティマ」、「ウィザードリィ」、「ローグ」などの海外RPGを基本にしつつも、それぞれが自由な発想でRPGを進化させていた時代。
RPGのカンブリア爆発という感じじゃった。 

じゃからもしかしたらこの難儀なシステムが、RPGのスタンダードになっていた可能性もあるのじゃ。まあそうはならなかったものの、本作の「ウルティマ」と「ウィザードリィ」を上手く組み合わせて発展させたシステムは、ファミコン版「桃太郎伝説」が作られる際の参考にしたそうじゃからの。系譜として受け継がれていった訳じゃな。

念のために言っておくが、本作は「ドラゴンクエスト」より前の作品じゃぞ?

ところで話は変わるんじゃが、本作の主人公はいくら神に暴言を吐いて罰を受けた身とはいえ、ゲームの世界で殆どの人間から好意的な扱いを受けることは無い。フィールド上で、道を1歩外れればモンスターがいるような状況にも関わらず、道で会った人間に斬りかかられる。

「いやいや、そんなことしとる場合じゃないじゃろ!」
協力してモンスターを倒すとかないのか?なんでここまでこの世界の人間達は殺伐としておるのじゃ?

その答えのようなものは、マニュアルの中に書いてあったんじゃ。
マニュアルには「この世界の住人は、あなたと同じ目的の戦士ばかりです。」とある。つまりじゃ、この世界の人間達は、皆主人公と同じようになんらかの罰を受けてこの世界に落とされ、同じように「夢幻の心臓」を3万日以内に探し出すことを目的にしておるということなんじゃよ。 

要するにこの夢幻界の住人にとって主人公は、自分が生き返るチャンスを奪うかもしれない相手じゃ。もしかしたらもう生き返るのを諦めた人間もいるかも知れんが、そいつらの中には、自分は諦めたのにこいつだけ生き返らせてたまるか! と思うやつも当然おるじゃろ。だからこの世界の人間は殺伐としておるんじゃ。
恐ろしい世界じゃのう。

ところで、ゲームの期限となっておる”3万日”じゃが。漠然と3万日といわれても実感が無いんでの、計算してみたんじゃが年数でいうと、約80年じゃった…。
つか期限長すぎじゃろ!

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