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発売年:1988年
開発元:工画堂スタジオ
ジャンル:コマンド選択式AVG
発売機種:PC-88、PC-98、X1、MSX2
※画像はすべてPC88版のものです

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blog_kanrinin
今の若いものには信じられんかもしれんが、1980年代後半の日本はバブルの絶頂期での、どこもかしこも人手が足らん状態で頼むから我が社に来て欲しいと、なんの変哲も無い普通の就活生にも複数の会社から内定が来たという話がザラにあった景気のいい時代だったんじゃ。

どこの企業も成長して都市部のいいところにビルやマンションを建てたがったりしたわけじゃが、そうなると土地の値段が跳ね上がっての、その結果、住んだり使用したりする目的ではなく、他人により高く売りつけるために土地を買うような人間も多く現れ、そのために狙った土地の所有者を過激な嫌がらせで立ち退かせる、所謂「地上げ屋」なんて存在も多くあったんじゃよ。

一方でこの頃は多くの若者が兎に角ファッションにお金をかけていた時代でもあっての、日本のファッションブランド、所謂「DCブランド」の商品に身を包んだ若者があちこちにいたもんじゃ。また原宿竹下通りなどでは、タレントショップなども多く登場し、若者や観光客らがそこの商品を買い漁っておったんじゃ。

今回紹介する作品は、そんな時代を表現した作品になっておる。
では中に入るがよい、賢者の塔 FLOOR 62 じゃ!

「原宿アフターダーク」とは?
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「原宿アフターダーク」は、1989年に工画堂スタジオから発売されたコマンド選択式AVGで、これまで「覇邪の封印」や「サイキックウォー」などRPGを多く手掛けてきた工画堂スタジオとしては、大きな路線変更といえる作品であった。
(ちなみに同社のSFシミュレーションゲーム「シュヴァルツシルト」も1988年の作品)

本作は原宿というエリアを舞台にした「現代刑事モノ」のAVGとなっており、プレイヤーは渋谷署原宿分室に勤める刑事となり、原宿の代々木公園で起きた殺人事件を解決するのが目的である。本作は、事件調査のために関係者への聞き込みや取調べだけでなく、目的のエリアの建物や住宅一軒一軒を回って聞き込みを行うという、実際の事件捜査で行われるようなことを”しなければいけない”というのが非常に特徴的な作品であった。

また現代モノの作品らしく、作品のテーマとして1980年代によくテレビを賑わせていた「地上げ問題」や「DCブランドなどのファッション業界」、そして「愛人バンク」などが扱われており、これらはあまり当時のAVGの話題として取り上げられるテーマでは無かっただけに、そこも本作の大きな特徴であったといえる。

捜査の第一歩は移動から
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プレイヤーが捜査するのは、3月25日の早朝に代々木公園でみつかった女性の遺体についての捜査なのだが、なんとこの女性と思われていた遺体は、実は女装した男性である事が冒頭で明らかになり、そしてタレコミによりその男性が「刈谷不動産」の社員「毛利裕」であったことが解る。

この情報を受けてプレイヤーは早速「刈谷不動産」への捜査を開始することになるのだが、原宿分署を出るとまず原宿のどのブロック(神宮前6丁目など)に移動するのかを選択する。ゲーム開始時には刈谷不動産のあるブロックにしか移動は出来ないが、関係者への聞き込みやゲームの進行により移動の範囲は広がっていく。

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次に移動したブロックの中で、最終的にどこに行くのかという目的地を選択する。こちらも最初は刈谷不動産しかいける場所が無いのだが、ゲームの進行と共に行ける場所が徐々に増えていく。ちなみに行くべき場所の情報が得られたとしても、それがどのブロック(何丁目)にあるのかが情報として得られていなければ、移動することは出来ないので注意が必要である。

移動画面では目的の場所に行くだけでなく、このブロックにある建物や民家に対して「聞き込み」を実行することもできる。また「電話をかける」というコマンドも実行できるのだが、これについては後述する。

関係者から聞き取り調査をする
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事件に関係していると思われる会社やマンションに到着すると、そこの関係者に対して聞き込み調査を行うことが出来る。聞きだすことが出来るのは、その人物のプロフィールや事件当時のアリバイ、さらに事件の関係者、関係施設や用語、そして見つかった証拠品についてなどだ。

事件の被害者「毛利裕」が務めていた「刈谷不動産」のように、被害者と大きく関係のある場所では、被害者本人の性格や事件当日の様子なども聞きだすことが出来る。

最初のうちは関係者から聞ける内容も少ないが、聞き取り調査を進めていくうちに新たな関係者や関係施設、証拠品は増えていくので、一度話を聞いた相手にでも新たな情報が増えるたびに足しげく通って話を聞く必要がある。また関係者の中には「嘘」をつくものもいる。聞き出した情報やアリバイは、こまめにメモを取りその矛盾点を調べる必要があるだろう。

嘘をつく人物には何か”やましい事”がある。
それはつまり事件に関わっている可能性が大という事なのだから。

聞き込みは靴をすり減らして
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さて事件を解決するためには兎に角多くの情報を集めなければいけない。例えば被害者の事件当日の行動の裏づけ、関係者のアリバイの証明や関係施設に関する近所の噂など、何が事件解決のきっかけになるかわからない以上、情報は多く集めるほどいい。

本作では、移動できる各ブロック毎に「聞き込み調査」を行うことが出来る。これは関係者への聞き取りとは別に、そのブロックにある施設や会社、民家などに対して聞き込みをするモードである。プレイヤーは地図の上をRPGのように歩き回り施設(MAP上のオレンジのエリア)に入ることで情報を得られるのだが、どこのブロックでも聞き込みできるエリアが兎に角多いので苦労するだろう。

しかも殆どのエリアで「事件の事?知りませんよ?」みたいな態度をとられ情報も得られないので、非常に苦痛な作業なのだが、ここから被害者の足取りがつかめたり、思いがけない重要情報が掴めそこから捜査が進展したりするので必須の作業となる。当然この聞き込みも、捜査の進展により得られる情報が変わってくる場合があるので何度も何度も行う必要があるのだ。

この聞き込みシステムは本作の大きな特徴とも言えるもので、悪く言えば苦痛の一言だが、良く言えば本当の刑事が行う靴をすり減らして行う捜査を体験できるシステムとも言える。

”ホウレンソウ”は仕事の基本
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事件の調査が進むと、被害者である「毛利裕」は仕事としてとあるマンションの買占め(住人を出て行かせて、その建物や土地を別の人物に売る、悪く言えば「地上げ」)を担当しており、かなり強引なやり方をしていたことがわかる。事件はそれを恨んだものの犯行かと思いきや、被害者の経歴から事件はファッション業界の裏側へ、さらには過去に起きた複数の自殺事件、そして新たな殺人事件にまで関係してくる。

当然それらについての調査をプレイヤー1人で全て行うのは荷が重い。そういう時は原宿分署に帰って、同僚達や上司の力を借りるのだ。本拠地である原宿分署では、鑑識により証拠品の調査、資料室での過去の新聞記事や事件の情報取得が出来るほか、上司に関係者のアリバイ調査、関係施設の家宅捜索、プレイヤーが担当外の事件の調査などを依頼することが出来る。

これらの内容はプレイヤーが集めてきた情報により内容が変わるだけでなく、依頼した調査の結果により事件の進展もあるため、上司への報告・連絡はこまめに行ったほうがいいだろう。

また原宿分署の刑事部屋にはプレイヤー以外の刑事が4人つめている。彼らはそれぞれが捜査に関係するいくつかの”ライン”を担当しており、それぞれに相談することでそのラインの進行度によりアドバイス(次に何を調べるべきかのヒント)を得られ、これは捜査の進行度を現す指標ともなっている。

まめな報告・連絡・相談は、やはり仕事の基本ということであろう。

尋問で容疑者を追い詰める
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捜査が進んでいくと被害者である毛利はマンションの買占めに絡むいざこざではなく、何者かの”ある秘密”を知り、その秘密をその人物への脅しに使用した結果殺されたのではないか?という疑惑が浮かんでくる。その秘密とは何なのか?これを突き止めるのが本事件解決への大きな足がかりになるだろう。

その為に、暴かれては困るやましい事を抱えている人物を徹底追及することになるのだが、その人物を追いつめられるだけの情報がある程度揃った段階になると、プレイヤーの上司から「取調べ」の許可が下り、その人物を容疑者として取調室に呼び出して尋問することができるのだ。

取調室では容疑者に質問をぶつけていくことで追い詰めていけるのだが、取調室に呼び出した=追い詰めたというわけではない。その時点での必要な情報が揃っていない、また別の容疑者からの証言を尋問で得ていないなど詰めが甘いと追い詰めることは出来ず、そのまま容疑者を返す結果になってしまう。

尋問は完璧な情報収集を行ったうえで行うべきであろう。

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毛利殺害事件を追っていくと、毛利と非常に関係の深いある人物が浮かび上がってくるのだが、なんとその人物は捜査の途中に死体となって発見されてしまう。そしてその人物の所持品の中には「手帳」があり、その中にはある人物2名の名前と電話番号が記されていた。

第2の殺人事件を調査するために、移動画面から「電話をかける」コマンドを実行し、電話番号を入力してこの2名から情報を聞き出す必要があるのだが、しかし普通にプレイしていた場合どこでどう頑張っても
この2名の電話番号を知ることはできない。

というのも、この電話番号はゲームのマニュアル内にのみ記載されており、ゲーム中では一切表示されないようになっているのだ。これは当時横行していた不正ゲームコピーに対する一種のプロテクトであり、単純にゲームをコピーしただけだと重要な情報が得られずゲームがクリアできないようになっていたのである。(しかもマニュアルは再配布もしないと、マニュアルに注意書きが記載されている徹底ぶり)

従って当時「電話番号解らなくて行き詰った」などと口にするのは、自分が不正コピーしたと自白するようなもので、刑事モノAVGだけに語るに落ちるとは正にこの事であろう。

お前が犯人だ!
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毛利の殺人事件、第二の殺人事件、そして過去に起こった様々な事件と自殺。これらは一体どういう繋がりがあるのか、殺された毛利は誰を脅迫していたのか、そして脅迫されていた人物にはいったいどんな弱みがあったのか。単なる地上げに絡むいざこざから発生したと思われていた事件は、捜査によりファッション業界と医療業界の闇を映し出し、そして「愛人バンク」という裏の世界をも照らし出す。

そして捜査をしていくうちに、関係者の中で事件の犯人(またはそれに大きく関係している)と思われるが数人に絞り込まれ、さらにその人物達を徹底的に取り調べていくことで、事件の最重要容疑者に対し「問い詰め」という相手を自白させるコマンドを使用できるようになる。

しかしこれが出たらゴールではない、ここからが本作の最も難しいところなのだ。自白を迫られる容疑者も黙ってはいない、刑事(プレイヤー)に対し自分のアリバイや殺人の動機、その手順などを逆に問い詰めてくるので与えられた選択肢からそれら全てに正確に答えなければならないのだ。ひとつでも間違った解答をすると、自白させることは出来ない。

しかもここで聞かれる内容は、今までの捜査で得た情報をしっかり把握していないと回答できない。ここまでは正直ただコマンド総当りでやっていても進行することは可能だったが、そこで得た情報聞き流してメモも取っていないような状態では、人間関係やアリバイの矛盾、殺人の動機などを指摘することはまず不可能だろう。

そして犯人を正しく問い詰めることが出来れば、事件の全てが明確になり、
プレイヤーはこの事件は解決したことになるのだ。

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どうじゃったかの?ストーリーに関しては、事件ものとしての矛盾点なども見当たらないほど非常に良く出来ており、不動産業界、ファッション業界、医療業界、そして裏の業界という一見繋がりの見えない世界同士を、幾つかの事件を通して接続しつつ、それらの闇の部分もうまく見せるようなストーリーは個人的に感心したのう。

こういった刑事もの特有の、明らかに怪しい経歴や不確かなアリバイを見せ付けて、プレイヤーをミスリードしようとする展開も上手くできておる。わしも途中まで完全に犯人の予想を間違えておったからの。しかも、全く事件に絡まない人物が実は犯人で「意外な人物が犯人!(ドヤ顔」という受け手の推理の楽しみを奪う推理小説のようなオチでもなく、確かに意外ではあるが情報を振り返ってみれば「あ、そうか!」とちゃんと気付かされるようなオチになっておる。

本作はAVG作品として「良く出来ている」と言っても差し支えないものではあるんじゃが、全体を通して内容がかなり「大人向け」で、この作品が発売された当時まだ子供だったわしにとっては、さすがに手にして遊ぼうとは思えないものじゃったわい。その頃はファンタジーとかSFモノばかり遊んで追ったからの。じゃから今大人になって改めて触れると、その面白さに気がつく作品じゃと思う。

ところで本作のゲームシステムについて、ここまでの紹介で既に気がついた人もおるかもしれんのう。そうなんじゃ、実はこの「原宿アフターダーク」という作品のゲームシステムは、リバーヒルソフトの「殺人倶楽部(1986年)」に非常に似ておるんじゃよ。
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 移動の仕方、プレイヤーの本拠地で出来ること、関係者への聞き取り、取調べ室に呼び出しての尋問、「殺人倶楽部」でシステム的にプレイヤーが出来ることに関しては、全て同じように「原宿アフターダーク」でも可能になっており、そのコマンドプロセスも酷似している。「殺人倶楽部」のプレイ経験者に「原宿アフターダーク」をリバーヒルソフトの作品だといってプレイしても、大方信じられるのではないかというくらい似ているんじゃ。

ただ本格的な現代事件捜査モノをAVG化しようとすると、どうしても実行するコマンドは似てしまうじゃろうから簡単に本作を「パクリ」などと言うつもりはないんじゃ。それに作品の中に漂う雰囲気というものは異なっており、殺人倶楽部はハードボイルドな海外刑事ドラマ、本作は日本の刑事サスペンスドラマの雰囲気を、それぞれよく出せていると思うんでの。

それに殺人倶楽部には、あのしらみ潰しに一軒一軒聞いて回らないといけない聞き込みシステムは無いからのう。あれが殺人倶楽部と差別化できる、本作の”オリジナリティ”と言って問題ないじゃろうな。
まあ、それが良いか悪いかは別としてじゃが。


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